はじまりのおわりに -404回記念更新に代えて-

mojataku2009-03-17

第一話:http://d.hatena.ne.jp/mojataku/20090313
第二話:http://d.hatena.ne.jp/mojataku/20090314
第三話:http://d.hatena.ne.jp/mojataku/20090315
第四話:http://d.hatena.ne.jp/mojataku/20090316
 
この四国チャリ一周で、
僕の旅人生の発端となる四万十川の憧憬は一度消化されることになる。
10代の後半部分を丸5年使ってここまできたので、
旅に対する自分の哲学がこの時に形成されたといってもよい。
そして自分の人生の中で最も貴重な時期の一つであるこの5年間に、
たくさんの人に恵まれ、
いろんな刺激を受けながら成長することができたことが何よりの幸福だった。
 
これらの経験は二年後に始まる北海道チャリ三部作や、
海外バックパック旅行に繋がってゆくことになる。
北海道は一人旅の恐れを打破するきっかけとなる機会となり、
韓国への出張は海外への恐れを打破する最良の機会になるなど、
この四国一周の後にも転機はいくつかあったのだが、
ベースにあるのは本文で述べた一連の四万十川の憧憬が生んだ旅の軌跡である。
 
四国一周は前述したように、最高という言葉では不足なほどに最高だった。
あえてここでは旅の模様を詳細に描くようなことはしない。
こんな下手な文で文章化すると、自分の思い出が陳腐になるような気がするから。
 
ただひとつ、最後に四万十川に初めて到達した頃の様子だけを叙述したい。
 
―長い久礼坂を越えた向こうはもう夕暮れだった。
カナカナとヒグラシの鳴く下り坂を自転車で下ると、嘘のように空気が涼しくなった。
空は雲ひとつない快晴。
ブレーキをかけながら慎重に道の駅の角を右に曲がった。
曲がったその先の道が軽く上っていくのが見えた。
ちょうど、何かをまたいでいるようだった。
相方と並走しながら、薄汚れた顔を見合わせて、
立ち漕ぎで上り坂を一気に駆け上がった。
夕陽がすごくまぶしかった。
 
それは、或る晴れた夏の日の夕暮れ時、
故郷を出発してから4日目のことだった。
 
第一部 旅のはじまり 了