最近読んだ本

読んでから少し時間がたつものもあるが,最近読んだ本をまとめておく.

 

 

●色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

 

再読,前に読んだのは2013年ごろで村上春樹に触れたのもこの作品が初.
主人公のつくるが,高校時代の親友たちに心当たりのないことで裏切られるところから物語が始まる.

物語が進むにつれ裏切られた理由が明らかになっていくのだが,
本当の核心である"裏切られたその後の悲劇"の謎は明かされないまま,暗喩的に終わっている.

謎解きのようで個人的にはとても読みやすく,村上春樹にこの本からハマった理由が分かった.
次はノルウェイの森(これも再読)と騎士団長殺しを読もう.

★★★★☆

 

 


カンガルー日和

 

カンガルー日和 (1983年)

カンガルー日和 (1983年)

 

 

村上春樹の短編集.
今年友人たちとビアガに行く前,川崎のブックオフで100円で買った.

比較的長い"図書館奇譚"は"世界の終わりとハードボイルドワンダーランド"のルーツっぽくて好み.
"4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて"などの短編も有名でたまに聞く.
全体的に読みやすくておしゃれだけど物足りないところもある.短編だし,仕方ない部分もある.

★★★☆☆

 


●論文捏造

論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)

 

近所のブックオフで100円で入手.
なければAmazonで買おうと考えていたくらい興味があった作品.
夢中になってしまい,子供の運動会の場所取り・応援の合間に読み終えてしまった.

2000年代初頭,捏造で科学界を震撼させたシェーン氏が起こした事件を綴ったノンフィクション.
有機半導体での高温超電導記録を次々と塗り替えていったが,それは全てうそでした,という作品.
 #というか気づいた匿名の人がすごい

怖かったのが,犯人であるシェーン氏がまだ捏造であると認識していないということ.
"こうやればこうなるはず,だからデータをでっちあげても問題ない"と極論すれば読める.
仮にでっちあげたものが他者に再現されれば,捏造は捏造でなくなってしまう.

私は2006年に有機半導体の研究をしていたころ,
学会主催の研究合宿でこの事件のドキュメンタリーを見る機会があった.

今思えば,この事件で有機半導体が一躍脚光を浴びるものの,
捏造が判明してからは少し下火になったのではないか,と感じることがある.
正しく科学の発展を導くという意味で,現在もデバイス研究に携わる自身にも戒めていきたい.

個人的に一番笑ったのは自作のスパッタ装置を披露した時の研究者の反応.
写真で見れば笑いどころだけど,現場にいたら凍り付くだろうな….

★★★★★

 

 ●ドキュメント 滑落遭難

ヤマケイ文庫 ドキュメント 滑落遭難

ヤマケイ文庫 ドキュメント 滑落遭難

 


滑落事故のドキュメント.
Amazon primeでタダだったので,都内出張の往復で読んでしまった.

とにかくリアリティがあって怖い.
事故に遭った本人や,救助者の証言,亡くなった方の状況などをもとに,
いくつかの遭難のケースについて仔細に述べられている.

印象的だったのは大峯奥駈道のケースと赤城山のケース.
大峯奥駈道のケースは,パーティの一人が滑落後,
動揺したパーティが小屋に避難する間にもう一人滑落して脳挫傷に遭うところ.
赤城山のケースは積雪期の山に未計画で登った主婦が滑落し,
しばらく生き残ったものの投資したと考えられるケース.
雪が深く,身動きが取れなかった…だろう,というのが恐ろしい….

私もなんちゃって登山を一年に数度するが,あまり身の丈に合わない山に挑戦するのは危険だと思った.
実際,2008年夏に北海道の暑寒別岳に登った時,霧で視界が悪くルートを間違え,
急なザレ場を2メートルほど滑り落ちてしまったことがある.
両手両足を両脇の岩場に突っ張って体を支えていたが,頭上には岩しか見えず,人が来るとかえって落石が怖かった.
眼下は10メートルほどの崖でブッシュが見える.
登山道からは近かったので助けを呼んだが,"高くなければ足から飛び降りてしまったほうがいい"と言われた.
とてもではないがそんな勇気はなかったので,20分ほどかけて手足を交互に岩場に突っ張って登った.

ベテランが入念に準備しても遭難に遭うときは遭うケースもあったからね….
ぞわぞわするので,次は同じ著者の"生還"を読む予定(これもAmazon primeでタダ).

★★★★☆