2007年の小説.4年ほど前,松本を旅行した時に買ったが読んでなかった.
実は初めての伊坂小説.
同期に伊坂幸太郎好きがおり,話を聞いた時からずっと気になっていた.
まずよかった点.
首相暗殺の濡れ衣を着せられ,謎の権力によって無実の青年が追いつめられる描写は不思議なリアリティがあり純粋にハラハラする.
またセキュリティポットの存在は,近年の監視社会を15年も前に見抜いているということを感じさせ素直に関心.
現代と青春時代の交錯と,青柳と樋口視点の切り替えは素直に上手.海辺のカフカ感もある.
伏線がかなり散りばめられていて,気づかなかった部分は何度か読み返してしまった.
一方ちょっとイマイチ点.
今回北海道の移動の際に2日くらいでザーッと読み終えたのだが…思ったより長く,後半はやや斜め読み気味になる.
描写が細かいということなのだろうが,1日目の逃走部分は回顧シーン長めで本筋があまり進まない感が.映像作品にするにはいい描写なのかも.
あと,現実的でないのでは…というシーンが多々.
・大外刈り万能すぎ
・逃走中,元勤務先のシステムにログイン #すぐ身元ばれそう
・"警察は派手なことはできない"とか言いつつ小鳩沢目立ちすぎ #この時代のガラケーでも動画も取ってシェアできたような
・キルオ強すぎ,あと撃たれても動きすぎ
・ショッピングセンターで会った若者5人組のノリが謎
・古い車がバッテリー替えてすぐ動く…?
・というか戒厳令さながらの仙台を車検切れ車で運転したら一瞬で捕まりそう
・警察包囲網の中でマンホールのふたを変えたり花火を街中で打ち上げられるの…?
・殺人犯に金もらって部屋を又貸しする親子の存在
ストーリーがシリアスな分,ちょっとメルヘンな部分は気になってしまった.
あとは単純にセリフがちょっと不自然だった.
"ザッツ監視社会"とか普通の会話で言うか…?これは好みなのだとは思うが,序盤の会話シーンから私は気になってしまう.
細かいセリフの違和感(2007年という時代背景を考えてもこんなしゃべり方するやつおらんやろ,という違和感)や展開の仕方に強引さを感じたという点で,読む気がちょこちょこ無くなり気味になってしまったのは残念.
ただオチが気になって完読したのも事実なので,構成は非常に引き込ませるものがあるのだろうと思う.